どらまねブログ

コラム【バイデン大統領就任演説に思ったこと】

「Democracy has prevailed.ー民主主義は勝利した。」

バイデン米大統領の就任演説全文を読んでみた。

カッコいい!

というのが、第一印象だった。
次に、感じたのが、

リーダーのメッセージだな!

ということ。そして同時に、

国民の期待を、超意識して作られてるな!
メッセージの行間に、めっちゃ緊張感を感じる!

ということでした。
もちろん、この演説の「直後」に、数々の大統領令を連発して、
スピーチにおける決意を、即座に実行に移し、形にするという、
アメリカの「制度(慣例)」があるからこそのスピーチだと思うんだけど、
それにしても素晴らしいスピーチ原稿だと思ったわけです。

僕が感動した部分を少し引用します。

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われわれはキング牧師が夢を訴えた緑地帯「ナショナルモール」が見える場所に立っている。108年前、(ウィルソン大統領の)就任に当たり、投票権を求める勇敢な女性らの行進を数千人の抗議者が阻止しようとした場所でもある。そして今日、米国史上で女性として初めてカマラ・ハリス副大統領が就任した。何も変わらないとは言わせない。

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我々の選挙運動を支援してくれた全ての人が示してくれた信頼に厳粛な気持ちを抱いている。指示しなかった全ての人にはこう言わせてもらいたい。われわれが前に進む間、最後まで聞いてほしい。私と私の心を見極めてほしい。それでも同意しないならそれで良い。それが民主主義だ。共和国の中で平和的に異議を唱える権利は、おそらくこの国の最大の強みだ。
ただ、しっかり聞いてほしい。意見の違いが分裂につながってはならない。私はあなたたちに誓う。私は全ての米国民の大統領になる。私を支持しなかった人々のためにも、支持してくれた人々と同じように懸命に闘うと約束する。

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一方で、私たちの国の施政方針演説の原稿を読むと、ゲンナリする。
国民に期待と希望を感じさせ、自らの責任を自覚し、決意を固めることを目的としたスピーチではなく、支持率を「下げない」ことに最新の注意を払うことを目的に記されたように感じてしまう、そんな原稿だったからだ。

仕事柄、社長のスピーチ原稿や、社長から社員への手紙、プレゼンなどをアドバイスすることが多い。
これらを考える時に一番大切なことは、観客を(聴衆を)想定することだと思う。観客が何を期待しているのか?このスピーチを聴くことで、観客がどういう感情を感じてくれるのか、どういう行動に繋がるのか、そういうことを真剣に考えて制作することは、絶対条件だ。
大統領就任演説全文を、ぜひ読んでみてほしいと思うわけですが、この原稿の中には、アメリカ国民の様々な層を強く意識した箇所が見受けられる。貧困層、労働者層、白人層、(昨日も書いたが)WASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)層など、様々な層の人たちに対する配慮が埋め込まれている。その人たちの不安や不信感を期待に変えることを想定した言葉が盛り込まれている。

敬愛するドラッカーは言う。

経営管理者は言葉を知る必要がある。
言葉とは何であり、何を意味するものであるかを知らなければならない。
そしておそらく何よりも、人に与えられた最も貴重な能力としての
言葉を尊重することを学ばなければならない。
経営管理者は、話し言葉や書き言葉によって人を動機づける能力がなければ成功しえない。
                      
                     「現代の経営(下)」P・F・ドラッカー

社長も首相も、もちろん上司である人たちも、リーダーは言葉を大切にするべきだと思う。箇条書きの「TO DOリスト」的な方針発表も大事だと思うけれど、人の心を動かし、決意と覚悟が伝わるような言葉を紡ぎ続けることは、もっと大切だと思う。古今東西、人を動かすのは物語だ。優れたリーダーは、希望の持てる物語を語り続けることによって、民衆の心を掴んだ。

今回の演説からも、学ぶことは多いなと感じたわけです。

最後に、アメリカ大統領らしく、スピーチの最後をカッコよく締める「締め方」を学べる文面も引用しておきますね。

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国民の皆さん、髪とあなた方の前での神聖な誓いをもって、今日のこの場を終わりにする。約束しよう。本音を言おう。私は憲法を守る。民主主義を守る。米国を守る。全国民に私の全てをささげる。権力でも個人的な利益でもなく、可能性や公共の利益を考え続ける。恐れや分断、暗闇ではなく、希望や団結、光の物語を書こう。良識、尊厳、愛、癒やし、偉大さ、そして美徳の物語だ。私たちを導く物語でありますように。われわれを鼓舞し、来るべき世代に歴史の求めに応じたと伝える物語だ。民主主義と希望、真実と正義が死なず、力を増した瞬間に立ち会った。米国が自由を守り、世界を導く光として再び立ち上がった瞬間だ。それは祖先や同時代の人々、そして次世代への義務でもある。
目標と決意を胸に、この時代の課題に目を向けよう。信仰に支えられ、信念に駆られ、そして愛する国に全力を尽くしながら。米国に神の祝福を。米兵に神のご加護を。ありがとう、米国。

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やっぱり、かっこいい!