どらまねブログ

コラム【僕たちは、トランプとバイデンの本質を知らない。】

ジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領となる就任式が、現地時間の1月20日(日本時間の21日)に行われた。
今月6日の連邦議会議事堂の襲撃も含めて、多くの混乱をもたらした大統領選挙だったと思う。
ただ、岩波書店の雑誌「世界」2月号に掲載された寺島実郎さんの記事を読んで、改めて思ったことがある。
それは、「僕たちは本当に、物事の本質を知らない」ということ。表面的な情報だけで、物事を見てしまっているなーという、大いなる反省でした。

2020年の大統領選挙の時に、このような地図が連日報道された。
赤いアメリカと、青いアメリカだ。
赤は共和党トランプが勝利した州で、青は民主党バイデンが勝利した州だ。
寺島さんの記事を引用する。

日本人としてこの地図を見つめると、「日本人は赤いアメリカを知らない」ことに気付く。2019年の日本人出国者2008万人農地、日本から米国に渡航した人は375万人だが、その九割以上はハワイ、グアムなど「島のアメリカ」と、西海岸のシアトルからロサンゼルス、サンディエゴにかけてのゾーン、そして東海岸のボストン、ニューヨーク、ワシントンDCにかけて、つまり「海岸線のアメリカ」である。ここは全てバイデンが勝った青いアメリカなのである。つまり、大方の日本人が実際に触れているアメリカは「青いアメリカ」であり、トランプを支える「赤いアメリカ」の本音は見えにくいのである。

選挙の総得票はバイデン8,128万票、トランプは7,422万票だったが、寺島さんの分析(CNN出口調査)によると、白人の58%はトランプ、41%がバイデンに投票、性別では男性の53%がトランプ、45%がバイデン、女性の57%がバイデン、42%がトランプと対照的。年齢別では、18−29歳までの若者は60%対36%でバイデンを支持、30−44歳はバイデン52%対トランプ46%
であったが、45−64歳はトランプ50%バイデン49%と支持が逆転、65歳以上はトランプ52%、バイデン47%となる。つまり、バイデン当選を支えたのはマイノリティー、女性、若者ということになる。

さらに、トランプが獲得した7,422万票の82%、6,040万票が白人票と推定され、驚かされるのが、白人の72%がトランプに投票したという。かつて米国の主導層をWASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)と表現していたが、その層の本音はトランプに共鳴していると、寺島さんは言う。

4年前の選挙の時に、トランプの支持層は中西部の「さび付いた工業地帯」(ラストベルト)の「プア・ホワイト」(白人貧困層)だったと言われていたが、今回、全米の白人プロテスタントの72%がトランプに投票したということは、貧困層だけではなく、アメリカの白人層全体の深層心理が「それでもトランプ」にあると言える。

2019年段階で、アメリカにおける白人の比重は58.7%、マイノリティーの比重は41.7%。あと3−4回の大統領選挙を経て「アメリカは白人の国ではなくなる」可能性が高い。「BLACK LIVES MATTER」などと人種差別反対の運動が盛り上がるほど、「ここは俺たちの国ではなかったのか」と言う苛立ちが、理性を超えて白人層の真理を突き動かし、本音の代弁者としてトランプ支持へと向かわせたのだ、と寺島さんは言うわけです。

(世界2021年2月号「脳力のレッスン」より)

僕たちは、トランプ支持の「事実」を知らない。
アメリカ社会の「分断」というキーワードが連日のように報道されているけど、その内実を知らない。

ハワイ、ニューヨーク、ワシントン、カリフォルニア。
キラキラしてスタイリッシュでカッコいい、そんなアメリカを「アメリカ」だと思い込んでいるだけで、それ以外の事実を知ろうともしていなかったと言うことに、反省したわけです。

僕たちはいつも、見えている部分、目立っている部分だけを見て、それが全てだと思い込んでしまう。

見えている部分の向こう側にある、見えていない「事実」に目を向け、耳を傾けることの大切さを、改めて感じさせられました。

よし、もっとちゃんと勉強しよっと!