ネクストワールド・サミット、通称「ねくさみ」。
「誰もが輝く未来を創る」という目標に向け、今いる社員の方々にスポットをあて、「彼らが本来持っているポテンシャルを引き出し、御社の次の時代を担う人材となってもらう為の仕組み」を考えて構成している、8ヶ月間に渡る複数の勉強会と、その発表の場。
この場に実際に社員を参加させることで、ねくさみの効果を体験・体感した、「ねくさみの先人」である嶋田社長に、その御経験をインタビューさせて頂きました。
ねくさみの場に参加した社員、そして見送った社長にそれぞれどのような変化があったか、是非御覧ください。
嶋田 雄二 社長
大正元年創業の酒類卸小売業、株式会社嶋田屋本店 代表取締役社長。
栃木県鹿沼市・宇都宮市・栃木市に販売拠点を持つ。
社員15名。
社長就任時、鹿沼市の店舗のみ、4名の家業として営んでいた嶋田屋を、独自の営業力で多店舗営業の企業に拡大。
価格競争の激化を受け、低価格営業から提案型営業への転換を図るべく、顧客情報等を把握し、タイミング良い商品提供や品揃え等のアドバイス、ビールサーバーの無料洗浄、陳列棚の整理など、アフターケアに努め、信用・信頼を確保している。社員教育にも力を入れており、定期的に研修や勉強会を行い、それを日頃の業務で実践する。成功体験や失敗事例を社員同士で共有し、スキルを上げていくことで、一体感や活気が生まれている。
栃木県知事から「平成29年度キラリと光る栃木の企業」表彰を受ける。
インタビュアー:
まず、ねくさみにはどのようなきっかけ・動機で参加されたのでしょうか。
嶋田社長:
7年ほど前に友人の紹介で森憲一さん・貴子さんご夫妻と出会い、親身に話を聞いていただいたり、会社でセミナーをしていただいたりしていました。そして、森さんがねくさみを始めるということで、1期の見学に行き、2期から参加させてもらいました。
その頃のうちの会社は、社員がまだ5〜6人で、自分が社員に「ああしろ、こうしろ」と細かく指示し、社員は「やらされ感」がある状態。「社員一人ひとりが輝き、自己成長感を感じられる」場を目指していたはずなのに、熱意が空回りするばかりで、「何かを変えなければいけない」と感じていました。
そんなとき、「駄目な人間はいない」、「今いる社員で会社は変われる」という森さんの言葉は強烈に響きました。ねくさみでは、今のうちの強みや、今あるものに気づかせてもらえるという感覚を強く抱いたので、それが一番の参加動機でしたね。
社員たちのことも、ねくさみの場に預けたら、彼らの可能性が引き出されて、きっと良い方向に向かっていくだろうという気持ちもありました。それまでは自分なりにもがいていましたが、自分にできないことは、外部に委託にしよう、と。例えば、自分の親父から言われるとイラッとするのに、親父の友達に言われるとなぜか素直に受け取りやすいというようなこともあると思うんですよ。
インタビュアー:
逆に、参加を躊躇するような気持ちはなかったのですか。
嶋田社長:
当時は、社員が大勢いる「大きな会社」に対して引け目を感じていて、正直、苦手意識がありました。しかし、3期のときに参加していた社長会で色々な社長さんと話す機会があって、「社員がたくさんいる大きな会社でも、うちみたいな人数の会社でも悩みってどこの会社もみんな一緒なんだな」、という感覚に変わりましたね。
実際に参加してみると、参加前は想定していなかったような社員同士のぶつかり合いや社員と自分とのぶつかり合いも起こりました。でも、激しいぶつかり合いがあったにも関わらず、ねくさみに参加した社員で辞めた者は一人もいません。一歩踏み込んで向き合ってきた分、今は、「ここまでは言っても大丈夫だな。言葉の表面じゃなくて本質を受け取ってくれるだろうな。」と信頼して関わることができていますね。
ねくさみの場では、いい意味で自分のことも会社の状態も丸裸になっていますし、「自分や会社のかっこ悪い部分を見せても馬鹿にされない」という安心感にも支えられていました。
インタビュアー:
ねくさみに参加した社員の方は、参加前と後でどのように変わりましたか?
嶋田社長:
自分たちはリーダーとして任されているんだという自覚を持って、やらされ感ではなく、「楽しくやるにはどうすればいいか?」という主体的な姿勢になりました。あとは、何かが起こったときに、「なぜだろう?」と深く考えたり知ろうとしたりするようにもなっていますね。
そういう彼らの姿を見ていて、彼らに対する自分の信頼感も増しています。
さらに、幹部(候補)の社員には、ねくさみの参謀塾にも参加してもらっています。
こちらの期待も感じてくれていますし、参謀塾で話したことは絶対に社長には内緒という約束があるので、会社の枠を越えた横のつながりから刺激を受けたり、いいガス抜きができたりもするといいなと思っています。
ちなみに、ガス抜きといっても、ねくさみの場で愚痴の言い合いになることはありません。そもそも、参加者のみなさんが、課題を解決・改善しようという前向きな姿勢で、職場で仕事をしてくれている仲間の分まで熱心に学んでいるので、そういう雰囲気になりにくい、ということがあります。それだけではなく、ねくさみの場では、「人が問題ではなく、問題が問題である」という視点を全員で共有している、ということもとても大きいと思います。もちろん、「課題」について話をするとき、「こういう部下・上司がいて困る」みたいな話は挙がりますし、一見マイナスに聞こえる発言も、むしろ大歓迎されます。ただし、ねくさみでは、「なぜその人はそういう状態なのか?」「その人が悪いのか?」「関係性が悪いのか?」「環境が悪いのか?」「その人の生きてきた背景なのか?」と詳しく掘り下げていくということをするんですね。すると、大体は、関係性か環境が悪いということに気づく。そうすると、誰かを攻撃するような雰囲気には全くならないんですよね。その人が生きてきた背景が原因の場合も、「そうなんだな。仕方ないな。」と知ると相手を嫌わなくてもよくなって、その生き方に合わせた関わり方を考えていきます。このように、物事の本質を見てみんなで一緒に考えることができる環境というのは、ねくさみならではのもので、本当にありがたいなと感じます。
インタビュアー:
周りの方からは、「他の社員の誰よりも、社長が一番変わった!」と言われていると伺いました。ご自分でも変わったなと感じる部分はありますか?
嶋田社長:
ねくさみの場には、大事な社員も参加させているので、会社のことも自分のことも、全部バレているんですよね。だから、ある意味で社長が一番鍛えられる場とも言えるかもしれません。でも、そういうさらけ出しができる場だからこそ、私自身、試行錯誤を続けて、少しずつですが、「俺はなんで今この相手にイラっとしたんだろう?」と問いかけたり自分を客観視したりできることも増えてきたように感じます。
社長会の場でも、お互いがお互いの癖を知っている仲なので、「あー、俺、またいつもの癖が出ちゃってるね」と自分で笑えるようになったり、周りも、「また出てるよ!」と笑って受け止めてくれたりするんですよ。そうやって自覚できることが増えていくにつれて、反射的に癖が出ることは減ってきたのかなとは感じますね。本当に、少しずつですけれど。昔のような力づくのやり方では感情論で終わってしまうし、それではダメなんだな、ということを感じさせていただきました。
ねくさみの場は、答えを教えてくれる場ではなく、本人の腹の中にあるものを引っ張り出して本人が気づけるようにしてくれる場だということも、これまでなかなか素直に認めにくかったことを受け入れていきやすい理由なのかな、とも思います。話をしているなかで、「あー、俺かっこ悪いなー」と自分で気づくことは、まだまだあります。社員との向き合い方だけではなく、自分自身との向き合い方も、さらに深めていきたいですね。常に、本質を探し続け、社員たちに問いかけていけるような経営者でありたいなと考えています。
インタビュアー:
色々とあるなかでも、自分の変化を一番感じた瞬間やエピソードは何かありますか?
嶋田社長:
特に印象に残っているのは、2014年の第3回ネクスト・ワールド・サミットのときのことですね。その年は、プレゼンテーションをさせていただく5組のうちの1組として我が社が壇上に上がらせていただいたのですが、自分の会社が色々な人に「見られている」という意識を深く身に刻む経験となりました。そして、うちの社員2人のプレゼンテーションを聴きながら、社員のみんなが本当に頑張ってくれたんだな、という深い感謝が湧いてきたんです。プレゼンテーションが終わった後、私が壇上で挨拶をさせていただいたのですが、支えてくださっているみなさんへの感謝と、うちの社員を誇りに思う気持ちを素直に伝えさせていただきました(※)。
壇上から戻って、ずっと見守ってきてくださった森さんご夫妻と顔を合わせた瞬間を思い出すと、今でもググッと込み上げてくるものがあります。結果としては、おかげさまで、その年の最優秀賞をいただいたのですが、そういう結果だったからというよりも、社員が頑張ってくれたからこその結果だという感謝の想いと、「見られている」という意識、これら2つを強烈に体験をさせていただいたからこそ、「社員を変えるには?」という考え方から「まずは自分こそが変わらなくては」という考え方にシフトすることができたのだと思っています。
人生のターニングポイントを聞かれたら、迷いなく、あのときのことを一番に挙げますね。
インタビュアー:
嶋田社長、ありがとうございました!
※このときのプレゼンテーションと挨拶の様子は下記からご覧いただけます。